対象業務はどう変わる?17分野と特定技能との関係を解説

はじめに
2027年4月に始まる育成就労制度では、外国人材を受け入れられる業務の考え方が、技能実習制度から大きく変わります。
技能実習制度では、「職種」と「作業」を単位として、外国人が従事できる業務が細かく定められてきました。
これに対して育成就労制度では、特定技能制度との連続性を重視し、「産業分野」と、その中に設定される「業務区分」を基準に受入れ対象が決まります。
よく、
技能実習は80職種以上、育成就労は特定技能と同じ16分野
と説明されることがあります。
しかし、2026年7月時点の最新情報では、この表現は正確ではありません。
現在、技能実習制度の移行対象は92職種169作業です。一方、特定技能の対象となる特定産業分野は19分野、そのうち育成就労の対象となる育成就労産業分野は17分野です。
本記事では、技能実習制度と育成就労制度の対象業務が、どのように変わるのかを解説します。
1.技能実習制度は「職種・作業」で対象を定める
技能実習制度では、外国人がどの仕事を行えるかについて、「職種」と「作業」を細かく定めています。
外国人技能実習機構の最新の移行対象職種情報では、技能実習2号へ移行できる対象として、92職種169作業が示されています。
例えば、製造業を一つの大きな分野として扱うのではなく、次のような職種・作業に分けて対象を定めます。
機械加工
金属プレス加工
鉄工
工場板金
めっき
溶接
プラスチック成形
パン製造
そう菜製造
水産加工
織布運転
婦人子供服製造
同じ企業の中で行われている業務であっても、認定された職種・作業に該当しない仕事を、自由に行わせられるわけではありません。
技能実習では、どの技能をどの作業によって修得するかを明確にし、その職種・作業に応じた技能実習計画を作成する仕組みでした。
2.育成就労制度は「産業分野」を基本に考える
育成就労制度では、受入れ対象となる業界を「育成就労産業分野」と呼びます。
育成就労産業分野は、特定技能外国人を受け入れられる「特定産業分野」のうち、外国人に日本で働いてもらいながら、その分野の技能を修得させることが適当と認められた分野です。
つまり、次のような関係です。
特定技能の対象となる特定産業分野
↓
その中から、3年間の就労による人材育成に適すると定められた分野
↓
育成就労産業分野
特定技能のすべての分野が、そのまま育成就労の対象になるわけではありません。
3.育成就労の対象は現在17分野
2026年7月時点では、特定技能制度の特定産業分野は19分野、育成就労産業分野は17分野とされています。
育成就労の対象となる17分野は、次のとおりです。
介護
ビルクリーニング
工業製品製造業
建設
造船・舶用工業
自動車整備
宿泊
鉄道
農業
漁業
飲食料品製造業
外食業
林業
木材産業
資源循環
物流倉庫
リネンサプライ
一方、次の2分野は特定技能の対象ですが、現時点では育成就労の対象には含まれていません。
自動車運送業
航空
したがって、
育成就労の対象分野は特定技能と完全に同じ
ではなく、
特定技能の19分野のうち、育成就労による人材育成に適すると定められた17分野
と説明するのが正確です。
4.「92職種」と「17分野」は単純には比較できない
技能実習の92職種と、育成就労の17分野は、数字だけを単純に比較することはできません。
なぜなら、分類の単位が異なるからです。
技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|
職種・作業で区分 | 産業分野・業務区分で整理 |
技能移転を前提 | 特定技能1号への育成を前提 |
92職種169作業 | 17産業分野 |
個別作業を細かく指定 | 分野別運用方針で業務区分を指定 |
例えば、技能実習制度では、製造業に関する多数の職種が、機械加工、金属プレス、溶接、塗装などに分かれています。
育成就労制度では、これらの多くが「工業製品製造業分野」という大きな産業分野の中で、さらに業務区分を設定して整理されます。
そのため、
92職種から17分野に減るので、仕事の種類が大幅に減る
と単純に考えるのも正確ではありません。
一つの産業分野の中に、複数の業務区分や技能が含まれるためです。
5.技能実習の職種が、そのまま育成就労へ移るとは限らない
技能実習制度で外国人を受け入れている企業であっても、現在の職種・作業が自動的に育成就労へ移行できるわけではありません。
育成就労を行うためには、次の事項を確認する必要があります。
事業が育成就労産業分野に該当するか
外国人が従事する業務が対象の業務区分に該当するか
3年間で特定技能1号水準へ育成できる業務か
分野別運用方針の技能目標を設定できるか
対象となる技能試験があるか
分野別の上乗せ基準を満たしているか
分野別協議会への加入等が必要か
運用要領では、育成就労の目標として設定できる技能試験についても、分野別運用方針に記載された試験であることが必要とされています。
したがって、受入企業は「以前から技能実習生を受け入れているから大丈夫」と判断せず、新制度の分野別運用方針と業務区分を改めて確認する必要があります。
6.育成就労では特定技能1号への道筋が明確になる
技能実習制度では、職種・作業と、特定技能制度の分野・業務区分が必ずしも分かりやすく対応していませんでした。
育成就労制度では、原則3年間の育成就労を通じて、特定技能1号水準の技能を有する人材を育てることが制度の目的です。
そのため、対象分野は特定技能制度との連続性を前提に設計されています。
基本的なキャリアの流れは、次のようになります。
育成就労の対象分野で就労
↓
3年間で技能と日本語能力を育成
↓
分野別に定められた技能試験と日本語試験を受験
↓
特定技能1号へ移行
この連続性により、外国人本人にとっては、将来のキャリアを描きやすくなります。
受入企業にとっても、3年間だけの受入れではなく、特定技能1号への移行後も継続雇用を検討しやすくなります。
7.新たに加わった分野もある
【事実】
現在の育成就労産業分野には、技能実習制度の従来の職種・作業との対応だけでなく、人手不足の実態を踏まえて新たに制度化された分野もあります。
代表的な新規分野は、次の3つです。
資源循環
物流倉庫
リネンサプライ
これらは、2026年1月の制度運用方針の見直しで追加された分野です。特定技能と育成就労の双方の受入れ対象として整理されています。
このことからも、育成就労制度は、単に技能実習制度の対象職種を名前だけ置き換えた制度ではないことが分かります。
日本の人手不足分野と、特定技能へのキャリア形成を基準に、対象分野が再編されています。
8.分野ごとに追加条件が異なる
同じ育成就労制度でも、すべての分野に同じ基準が適用されるとは限りません。
分野別運用方針や告示によって、次のような追加条件が設けられる場合があります。
受入企業の事業要件
協議会への加入
業務区分
技能試験
日本語能力
転籍制限期間
受入人数
監理支援機関の体制
分野独自の研修
待遇や安全管理
外国人育成就労機構は、育成就労産業分野ごとの上乗せ基準や分野別運用要領を順次公表しています。2026年7月にもビルクリーニング、リネンサプライ、外食業、鉄道などの分野別運用要領が掲載・更新されています。
したがって、企業が実際に受入れを検討する場合は、制度全体の運用要領だけでなく、自社が該当する分野の運用方針・運用要領まで確認する必要があります。
10.監理支援機関と受入企業が確認すべきこと
技能実習から育成就労への移行を検討する際は、次の順番で確認することを推奨します。
第1段階:対象分野の確認
自社の事業が17分野のどれに該当するか
特定技能だけの分野ではないか
育成就労産業分野として指定されているか
第2段階:業務区分の確認
外国人に行わせる主たる業務
関連業務の範囲
現在の技能実習作業との対応
特定技能1号の業務区分との接続
第3段階:育成目標の確認
1年目に受験する技能試験
3年間の終了目標
特定技能1号への移行試験
日本語能力の目標
第4段階:分野別条件の確認
協議会加入
上乗せ基準
受入人数
安全教育
監理支援体制
日本語教育
対象分野だけを見て「受入れ可能」と判断せず、業務区分と分野別基準まで確認することが重要です。
まとめ――「職種数が減る」のではなく、制度の軸が変わる
技能実習制度では、受入れ対象を職種・作業単位で細かく定めていました。
現在の移行対象は92職種169作業です。
これに対して育成就労制度では、特定技能制度との連続性を重視し、産業分野と業務区分を基準に対象を定めます。
2026年7月時点では、
特定技能の特定産業分野:19分野
育成就労産業分野:17分野
となっており、自動車運送業と航空は特定技能のみの対象です。
技能実習制度は職種・作業単位で、現在92職種169作業が移行対象です。育成就労制度は、特定技能の19分野のうち、就労を通じた人材育成に適すると定められた17の育成就労産業分野を対象とします。
育成就労制度への移行で重要なのは、単に現在の技能実習職種がどの分野に置き換わるかを見ることではありません。
3年間で特定技能1号水準へ育成できる業務か、日本語教育や技能評価をどのように行うか、将来の継続雇用につなげられるかまで含めて、受入れ体制を設計することが必要です。
※本記事は、2026年7月時点で公表されている育成就労法、関係省令、基本方針、分野別運用方針および『育成就労制度 運用要領』を基に作成しています。対象分野、業務区分、技能試験、受入れ見込数、分野別の上乗せ基準等は今後変更される可能性があります。実際の受入れに当たっては、出入国在留管理庁、厚生労働省、外国人育成就労機構および各分野の所管省庁の最新情報をご確認ください。
