働く外国人の日本語教育、受け皿乏しく 育成就労に不安の声:日本経済新聞
2026年5月15日

日本語講座を受けるインドネシア人技能実習生(4月24日、宇都宮市)
働く外国人向けの日本語教育体制が整わない。技能実習に代わり2027年4月に始まる新制度「育成就労」は、文部科学省が認定した日本語教育機関などによる講習を義務付ける。しかし認定されたのはまだ3機関のみで、日本語力を上げるための受け皿不足に不安の声があがっている。
在留の長期化を見据えるが……
「『行く』の使役形は?」「行かせます、です」。宇都宮市の食品メーカー、健食では週1度、技能実習生向けにオンラインの日本語講座を提供する。
インドネシア出身で来日3年目のレンディ・クルニアワンさん(21)は「前は自分一人で本で勉強していました。先生に教えてもらった方が理解できます」と話す。
講座を提供する内定ブリッジ(東京・千代田)の浅海一郎社長によると、健食のように外部教師による研修を計画的に実施している企業は少ない。技能実習はもともと3年程度での帰国を前提としており、入国直後の短期間の講習を除けば日本語を教える仕組みが制度上なかった。
来春に導入される育成就労は3年働いた後に最長5年の在留資格「特定技能1号」に移行する想定だ。政府は在留の長期化を見据え、コミュニケーション力を段階的に身につける制度に変える。
24年度に始まった日本語教育機関の認定制度は就労者向け、留学生向け、生活者向けの3類型がある。文科省は4月30日、留学生向けに新たに32機関を認定し計93機関になったと発表した。一方、就労者向けは2機関が申請していたが新規認定はゼロだった。
「全然足りない」。認定機関の一つである日本国際協力センター(JICE)の長山和夫上席主幹は危機感を募らせる。
教師は都市部の留学生向けが中心
就労者向けの教育機関が少ないのは、日本語学校の多くが留学生向けの認定を取るのに精いっぱいだからだ。
留学生向けの認定は制度上、29年春までに得なければ海外から生徒を受け入れられなくなる。日本語学校にとっては死活問題であるため、各校は就労者向けの認定申請を後回しにせざるをえない。
育成就労制度は当分の間、国家資格「登録日本語教員」の取得者による講習も認めている。登録教員は現時点で約1万8000人いるが不十分との見方が強い。
文科省の調査によると、留学生向けの日本語学校は24年度に648校で、教師は1万4000人だった。これまでに資格を取った登録教員の多くは日本語学校の教師とみられる。既に留学生への指導を担っているうえ大都市に偏っている。地方の中小企業などが就労者向けに指導者を確保するのは容易でなさそうだ。
受け入れ企業などの間では来日前に必要な日本語力を身につけるよう求める動きもある。もっとも国際人材協力機構(JITCO、東京)の調査で、来日時に必要な水準に達している実習生は1割もいない。多くの外国人材の日本語力を引き上げるには、海外の日本語教育体制を大幅に強化しなければ難しい。
日本語教育へのニーズはさらに高まりそうだ。政府は1月に示した外国人政策の基本方針で、育成就労以外の外国人に対しても「認定日本語教育機関や登録日本語教員の活用を見据え、日本語教育環境を整備する」とうたった。教育機関や教員を増やす抜本的な対策が必要になる。
