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【第1章】技能実習から育成就労へ        

2026.7.1

入国後の受入れ実務は何が変わるのか

はじめに

2027年4月1日、外国人材の受入れ制度は大きな転換点を迎えます。

これまでの技能実習制度を発展的に解消し、新たに「育成就労制度」が始まります。

技能実習制度と育成就労制度には、外国人が来日後に必要な講習を受け、企業で働きながら技能を身につけるという共通点があります。

しかし、制度の目的や、受入企業、監理団体・監理支援機関に求められる対応は大きく変わります。

技能実習制度は、開発途上地域等への技能、技術または知識の移転による「国際貢献」を目的としてきました。

これに対して育成就労制度は、日本国内で人材確保が困難な産業分野において、外国人材を育成するとともに、人材を確保することを目的とする制度です。原則3年間の就労を通じて、特定技能1号水準の技能を有する人材を育てることが、制度の中心に置かれています。

つまり、新制度では、外国人材を受け入れて仕事を教えるだけでは十分ではありません。

どのような人材に育てるのかをあらかじめ計画し、技能と日本語能力の目標を設定したうえで、教育、指導、評価を行い、その実施状況を確認・説明できる体制を整えることが重要になります。

本記事では、出入国在留管理庁・厚生労働省編『育成就労制度 運用要領』を基に、技能実習制度から育成就労制度への転換によって、入国後の受入れ実務がどのように変わるのかを解説します。

1.「技能移転」から「人材育成と人材確保」へ

技能実習制度の目的

技能実習制度は、日本で修得した技能、技術または知識を母国へ移転することにより、開発途上地域等の経済発展に貢献することを目的とした制度です。

制度上は、日本国内の人手不足を補うための労働力確保を目的とするものではありませんでした。

育成就労制度の目的

育成就労制度は、技能実習制度を抜本的に見直し、深刻な人手不足が生じている産業分野で、外国人材を育成するとともに、人材を確保するために創設された制度です。

基本的には、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を持つ人材を育成し、その後の特定技能1号への円滑な移行につなげることが想定されています。

この点が、技能実習制度との最も大きな違いです。

技能実習制度では、「日本で技能を学び、母国へ持ち帰る」という制度設計でした。

育成就労制度では、「日本で働きながら技能と日本語能力を高め、将来のキャリアにつなげる」という考え方が前面に出ています。

2.育成就労では、外国人一人ひとりの育成計画が必要

育成就労を行わせようとする受入企業、すなわち育成就労実施者は、育成就労外国人一人ひとりについて「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構から認定を受ける必要があります。

監理型育成就労の場合は、監理支援機関の指導に基づいて計画を作成します。

育成就労計画は、原則として3年間の育成期間について作成され、主に次のような事項が記載されます。

  • 育成就労の期間

  • 従事する業務

  • 修得を目指す技能

  • 技能の評価方法

  • 日本語能力の目標

  • 技能試験・日本語試験

  • 入国後講習

  • 就労中の育成・指導方法

  • 労働条件や待遇

  • 生活支援、相談体制

育成就労計画は、申請時に作成して終わる書類ではありません。

認定後も計画に沿って育成を進め、必要な試験を受験させ、計画の履行状況を継続的に管理することが求められます。

計画どおりに育成就労が行われていない場合や、認定基準を満たさなくなった場合には、認定の変更や取消しなどの対象となる可能性があります。

3.「何を教えたか」だけでなく、「どこまで育ったか」が重要になる

技能実習制度にも、技能実習計画、実習日誌、帳簿、監査などの仕組みがありました。

したがって、育成就労制度になって初めて計画や記録が導入されるわけではありません。

新制度で特に重要になるのは、3年間の到達目標として「特定技能1号への接続」が明確に置かれ、技能と日本語能力を段階的に育成・評価する仕組みになっていることです。

育成就労実施者は、育成就労計画に定めた目標に向けた中間的な評価として、原則として育成就労開始から1年以内に、一定水準の技能試験と日本語能力試験を受験させる必要があります。

すでに対象となる試験へ合格している場合などを除き、単に3年後の試験だけを見ておけばよい制度ではありません。

また、日本語能力についても、3年間で特定技能1号水準を目指し、必要な日本語教育を受けられるよう措置を講じることが求められます。

日本語能力の目標をすでに達成している場合を除き、認定日本語教育機関の「就労のための課程」で100時間以上学べるようにすることが原則です。当分の間の経過措置として、一定の条件を満たす登録日本語教員による100時間以上の授業も認められています。

4.受入れ側が答えられるようにしておくべきこと

育成就労制度では、受入企業や監理支援機関が、少なくとも次の問いに答えられる体制を整えておくことが重要です。

どのような人材に育てるのか

外国人材が3年間で身につける技能と日本語能力の目標を明確にします。

どのような仕事を通じて技能を身につけるのか

従事する業務と、修得させる技能との関係を説明できるようにします。

いつ、どのように評価するのか

1年目の中間的な試験と、育成就労終了時の目標となる試験を計画します。

日本語能力をどのように高めるのか

入国時の日本語能力を確認し、必要な入国後講習や、就労期間中の日本語教育を計画します。

教育や試験の機会を確保しているか

講師、教育機関、授業時間、受講方法、欠席時の振替などを事前に決めておきます。

計画どおりに育成が進んでいるか

出席状況、受講時間、試験結果、技能の習得状況などを定期的に確認します。

実施状況をどの記録で確認できるか

授業記録、受講時間、指導内容、試験結果、面談記録などを整理し、監査や報告の際に説明できるようにします。

5.日本語教育も「任意の支援」から「育成計画の一部」へ

育成就労制度において、日本語教育は単なる福利厚生や、外国人本人の自主学習だけに任せるものではありません。

技能の習得、安全な就労、職場での意思疎通、生活の安定、そして特定技能1号への移行を支える、育成計画の重要な要素です。

日本語能力が十分でなければ、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 作業指示を正確に理解できない

  • 危険や異常を報告できない

  • 分からないことを質問できない

  • 職場のルールを理解できない

  • 上司や同僚との意思疎通が難しい

  • 生活上のトラブルを相談できない

  • 技能試験や日本語試験への準備が遅れる

したがって、新制度では、日本語教育を「試験に合格するためだけの勉強」としてではなく、外国人材が安全に働き、職場で成長するための基盤として捉えることが重要です。

6.受入企業と監理支援機関に求められる準備

育成就労制度への準備は、制度開始直前に講師や教育機関を探すだけでは十分ではありません。

受入れ前から、次の事項を整理しておくことを推奨します。

  • 対象外国人の入国時の日本語能力

  • 育成就労計画上の技能・日本語目標

  • 入国後講習の実施主体

  • 日本語講習を担当する教育機関・教員

  • 就労中の日本語教育の実施時期

  • 仕事と授業を両立できる時間割

  • 出席・受講時間の管理方法

  • 宿題、小試験、進捗評価の方法

  • 技能試験・日本語試験の受験計画

  • 欠席や不合格時の追加支援

  • 監理支援機関と受入企業の役割分担

  • 監査・報告に備えた記録保存

新制度において重要なのは、授業を実施したという事実だけではありません。

教育の目的、内容、時間、担当者、学習状況、試験結果をつなげて管理し、「どのように人材を育成しているか」を説明できる仕組みが必要になります。

まとめ――教育を「制度対応」から「経営資産」へ

技能実習制度から育成就労制度への転換は、制度の名称が変わるだけではありません。

「技能を学んでもらう制度」から、技能と日本語能力の目標を設定し、計画的に人材を育て、特定技能1号へのキャリアにつなげる制度へと変わります。

受入企業と監理支援機関には、外国人一人ひとりについて育成計画を作成し、その計画に沿って教育、指導、評価を実施することが求められます。

一方で、適切な日本語教育と育成管理は、企業にとって負担が増えるだけのものではありません。

日本語能力が高まることで、職場の安全、作業品質、報告・連絡・相談、定着、キャリア形成の改善が期待できます。

外国人材を一時的な労働力としてではなく、ともに働き、成長する人材として受け入れること。

そのための教育を、単なる「制度対応コスト」ではなく、企業と外国人材の未来を支える「経営資産」へ変えていくことが、育成就労制度への対応で最も重要な視点です。

※本記事は、2026年7月時点で公表されている育成就労法、関係省令、分野別運用方針および『育成就労制度 運用要領(令和8年4月6日改正版)』を基に作成しています。分野ごとの上乗せ基準、対象となる試験、講習内容、申請・報告方法等は、今後更新される可能性があります。実際の受入れに当たっては、出入国在留管理庁、厚生労働省、外国人育成就労機構および各分野の所管省庁が公表する最新情報をご確認ください。